爪白癬(爪の水虫)
爪白癬とは,爪に白癬菌(いわゆる水虫菌)の感染を生じたために、爪の色が白く濁ったり、爪の厚みが増して変形したり、爪がもろく崩れやすくなったりした状態のことを言います。
痛みやかゆみを伴わないことが多く放置されやすいのですが、症状が進行すると、爪の変形のために痛みが現われ、さらには歩行が困難になることもあります。
また、感染した爪の中には大量の白癬菌が存在し、そこから常に菌が排出されるため頑固に足白癬(水虫)を繰り返すことが多く、家族内の感染源になることが危惧されます。
診断について
爪白癬が疑われた時は、あやしい症状のある爪の一部を切り取ったり、削ったりしてその中に白癬菌が存在するかどうか顕微鏡で検査します。
顕微鏡で見ただけではっきりしない時には、培養検査といって白癬菌が発育しやすい培地に切り取った爪の一部を植え付けて菌の発育を確認する検査を行います。
治療について
治療には、白癬菌の繁殖を抑制し、殺菌的な作用のある抗真菌剤という薬を用います。
ただし、抗真菌剤の外用剤(水虫の塗り薬)は足白癬(通常の水虫)に対しては効果が期待できますが、爪は硬くて丈夫な構造をしているために薬の吸収が悪く、爪白癬に対する十分な効果は期待できません。そこで抗真菌剤の飲み薬を用いた治療が主体になります。
現在使用されている抗真菌剤の代表はラミシールとイトリゾールの2剤です。
ラミシールは1日1回(朝食後)で約6ヶ月間毎日飲み続けるタイプです。
イトリゾールは、パルス療法*といって通常よりも多い量の薬剤を1週間飲んで3週間休むことを3回(3ヶ月間)だけ繰り返します。いずれも、8割以上の有効性が確認されています。
*パルス療法とは、抗真菌剤が内服終了後も長期間爪に残留して効果が持続する性質を利用して、通常より多い量の抗真菌剤を短期間だけ内服することで、長期間薬を飲み続けるのと同等な効果を期待できる治療法です。
治療上の注意事項
抗真菌剤の飲み薬を用いた治療では、まれに肝臓および腎臓の機能が障害される副作用が現われることがあります。
そこで、治療の開始前に血液検査で肝臓および腎臓の機能に異常がないか確認しておく必要があります。
この時の検査で異常がなかった場合にも、治療開始1ヶ月目と2ヶ月目にもう一度同じ検査を行って数値に異常変動がないか確認します。
その後も、治療期間を通して定期的な血液検査が必要です。
また、用いる飲み薬の種類によっては、他の疾患の治療に使われる飲み薬の一部のもの(たとえば、ある種の胃薬や睡眠薬、コレステロールを下げる薬、アレルギーをおさえる薬など)と飲み合わせの悪いものもあります。
詳しくは医師にお尋ねください。
治療の終了時期について
抗真菌剤の飲み薬を用いた治療は、白く分厚く変形した爪が根元のほうからきれいな爪に生え変わるまで継続します。
通常、爪が根元から先の方まで伸びるのには手の爪の場合で約6ヶ月、足の爪ではそれ以上かかりますので、治療に要する期間は6ヶ月~1年必要です。
治ったかどうかの確認は、肉眼できれいな爪に生え変わっているかどうかでできますが、はっきりしない時には顕微鏡検査や培養検査で菌がいなくなっていることを確認します。
治療によって白癬菌に対する免疫ができるわけではありませんので、治療終了後は再感染しないように注意が必要です。
足の清潔を保ち、長時間の足のムレを避けること、足白癬(通常の“水虫”)を疑う症状(足のかゆみや水疱,皮むけ,趾の股のじくじくなど)が現われたらすぐに皮膚科を受診することなどに注意しましょう。